少子化問題、雇用の安定へ有期契約の正社員を 佐藤博樹・東大教授(産経新聞)
【少子化インタビュー】(下)
不安定な雇用に置かれる若者の増大は、未婚化に拍車をかけ、結果として少子化につながる。東大社会科学研究所の佐藤博樹教授は、企業が正社員をたくさん抱えられない時代の到来を指摘する。
−−不安定な雇用の若者が増えた
「まずは雇用の量が増えないといけないのだが、正社員化で解決するかというとそう単純ではない。20年前に比べて一時的に雇用される非正規の数は今も昔もあまり変わっていない。増えているのは雇用が継続されている『常用非正規』だ。有期契約だけども仕事が続いている人たちが増えている」
−−なぜ増えているのか
「例えばパートが典型。1年契約だが勤続5年や10年が多数いる。ではなぜ正社員にできないのか。パートはある特定の店舗で雇用されているわけだが、いつかこの店舗を閉める可能性がないとはいえない。もし無期の正社員にすると店舗を閉鎖するときに他の店舗に移動させないといけなくなる。つまり、正社員にするということはかなり長期の雇用関係を前提にすることになるわけだ。仕事の内容が変わっても、勤務する場所が変わっても雇用を維持することが会社に求められるが、そうした人材をたくさん抱え込めない時代になっている」
−−時代が変わったのか
「経営環境の不確実性が高まり、経営の将来に関しての予測が立たなくなっている。そのため、長期の雇用関係を前提にして人材育成する正社員を最低限に絞り、足りないところを有期契約の社員や派遣などの外部人材の活用で対応することになってきている。ただ、有期契約の社員にもその店舗や仕事がある限りは長く勤めてもらいたいと企業は考えている。そのため『常用非正規』が増えている」
−−もう少し詳しく
「こうした『常用非正規』の雇用の安定化のために、私は『特約付きで無期の雇用契約を結ぶ新しい正社員類型』を提案している。どういうことかというと、無期雇用だが店舗限定や業務限定の雇用で、店舗や業務がなくなったときには契約を解除できるような雇用契約だ」
−−景気の影響は
「正社員化という議論だけでは解決しないということだ。何で企業が非正規を増やしたかというと、安く人を使いたいとか景気が不安定だからではなくて、市場環境の不確実性の増大が原因だ。人材活用に関して予測が立たなくなっている。今この商品が売れていても5年後も売れているかは分からない。そうすると長期の雇用関係を結んで、自社で育成する人をそんなに抱えられなくなる」
−−この状況は続くのか
「不確実性の増大は景気が回復しても続くだろう。市場環境が変化することは分かるが、どう変化するかが分からないから、長期の雇用関係を前提とした正社員はいざというときにも抱えられるように絞り込む。同時にそういう不確実な事態が起きても対応できる汎用性のある能力を持つ人でないと長期の雇用関係は結べなくなる。他方で、ワーク・ライフ・バランスが実現しにくい従来型の正社員の働き方を希望しない人も増えている」
−−今後、労働力人口が減るが
「正社員と非正規の比率はあまり変わらないだろう。しかし必ずしも非正規イコール不安定というわけではない。正社員の働き方がいいかというと、いつも転勤して残業しているのがいいのかという話になる。ワーク・ライフ・バランスからいえば問題なわけで、減らさないといけない。他方、業務限定や店舗限定で定年まで雇えというのはなかなか難しい。店舗がある限りあるいは業務がある限りの雇用保障はできるが、そのバランスが重要だ」
−−民主党の少子化施策の評価は
「全体のバランスでいうと、今度のビジョンも経済的支援、保育サービス、働き方の3つが柱とされているが、実際の施策を見ると、現金給付という子ども手当に財源の配分が偏っている。問題は保育サービスの財源がどうなるかだ」
−−子ども手当については
「子ども手当は1万3千円で、残りの1万3千円分(の財源)を保育サービスなどの現物給付に回すのが現実的だろう。この1万3千円分で必要な保育サービスの拡充などに必要な予算を十分カバーできる」
−−高校無償化は
「公立ならば高校の学費はそんなに高くない。高いのは大学と保育園・幼稚園。大学の授業料がこんなに高いのは先進国でも珍しい方だ。ヨーロッパはイギリスを除けばだいたい無料だ。イギリスもサッチャー政権までは無料だった。アメリカは別だが、代わりに奨学金が多い。日本では学生の親に依存している」
−−ポイントがずれている
「社会で子供を育てるという考え方は悪くないが、資源配分をバランスよくしないといけない。少子化対策は総合的にバランスよくやらないといけない」
−−このままやるとどうなる
「配偶者控除をなくさなかったから、現実の施策を見ると、『女性は子供をたくさん産んで家にいろ』ということになるだろう。政策的にそっちに誘導しているといわれてもしようがない。子ども手当の導入に合わせて配偶者控除をなくすのならばよかったが、残してしまった」
−−その一方で女性の社会進出を主張している
「そんなのは無理だ。意図とは別に、結果的にそういうふうに日本社会を持っていこうと思われてもしようがない」
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不安定な雇用に置かれる若者の増大は、未婚化に拍車をかけ、結果として少子化につながる。東大社会科学研究所の佐藤博樹教授は、企業が正社員をたくさん抱えられない時代の到来を指摘する。
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「まずは雇用の量が増えないといけないのだが、正社員化で解決するかというとそう単純ではない。20年前に比べて一時的に雇用される非正規の数は今も昔もあまり変わっていない。増えているのは雇用が継続されている『常用非正規』だ。有期契約だけども仕事が続いている人たちが増えている」
−−なぜ増えているのか
「例えばパートが典型。1年契約だが勤続5年や10年が多数いる。ではなぜ正社員にできないのか。パートはある特定の店舗で雇用されているわけだが、いつかこの店舗を閉める可能性がないとはいえない。もし無期の正社員にすると店舗を閉鎖するときに他の店舗に移動させないといけなくなる。つまり、正社員にするということはかなり長期の雇用関係を前提にすることになるわけだ。仕事の内容が変わっても、勤務する場所が変わっても雇用を維持することが会社に求められるが、そうした人材をたくさん抱え込めない時代になっている」
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−−もう少し詳しく
「こうした『常用非正規』の雇用の安定化のために、私は『特約付きで無期の雇用契約を結ぶ新しい正社員類型』を提案している。どういうことかというと、無期雇用だが店舗限定や業務限定の雇用で、店舗や業務がなくなったときには契約を解除できるような雇用契約だ」
−−景気の影響は
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−−この状況は続くのか
「不確実性の増大は景気が回復しても続くだろう。市場環境が変化することは分かるが、どう変化するかが分からないから、長期の雇用関係を前提とした正社員はいざというときにも抱えられるように絞り込む。同時にそういう不確実な事態が起きても対応できる汎用性のある能力を持つ人でないと長期の雇用関係は結べなくなる。他方で、ワーク・ライフ・バランスが実現しにくい従来型の正社員の働き方を希望しない人も増えている」
−−今後、労働力人口が減るが
「正社員と非正規の比率はあまり変わらないだろう。しかし必ずしも非正規イコール不安定というわけではない。正社員の働き方がいいかというと、いつも転勤して残業しているのがいいのかという話になる。ワーク・ライフ・バランスからいえば問題なわけで、減らさないといけない。他方、業務限定や店舗限定で定年まで雇えというのはなかなか難しい。店舗がある限りあるいは業務がある限りの雇用保障はできるが、そのバランスが重要だ」
−−民主党の少子化施策の評価は
「全体のバランスでいうと、今度のビジョンも経済的支援、保育サービス、働き方の3つが柱とされているが、実際の施策を見ると、現金給付という子ども手当に財源の配分が偏っている。問題は保育サービスの財源がどうなるかだ」
−−子ども手当については
「子ども手当は1万3千円で、残りの1万3千円分(の財源)を保育サービスなどの現物給付に回すのが現実的だろう。この1万3千円分で必要な保育サービスの拡充などに必要な予算を十分カバーできる」
−−高校無償化は
「公立ならば高校の学費はそんなに高くない。高いのは大学と保育園・幼稚園。大学の授業料がこんなに高いのは先進国でも珍しい方だ。ヨーロッパはイギリスを除けばだいたい無料だ。イギリスもサッチャー政権までは無料だった。アメリカは別だが、代わりに奨学金が多い。日本では学生の親に依存している」
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−−このままやるとどうなる
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校長「回復祈ろう」保護者ら登校付き添い 大阪・小2刺傷(産経新聞)
大阪市東住吉区今川の路上で、市立育和小2年、嵯峨根瑞奈(みずな)さん(8)が包丁で刺され、重体になった事件で、一夜明けた18日朝、育和小では緊急の全校集会が開かれ、笘(とま)敦朗(あつお)校長が児童約740人に「瑞菜さんが一刻も早く元気になるようにみんなで祈ろう」と呼びかけた。
全校集会は1時間目の授業を中止して午前8時50分から約20分間、体育館で行われ、笘校長が事件について説明した。児童らに大きな動揺はみられなかったといい、笘校長は「ショックはあると思うが、私の話を一生懸命に聞いてくれた」と話した。登下校時のほか休日にも安全に注意するよう呼びかけたという。
育和小ではこの日朝、通学路に教職員を配置し、PTA役員らの引率で子供たちが集団登校した。明るい表情を見せる子もいたが、保護者に肩を抱き抱えられるようにして登校する姿もみられた。
3年生と1年生の男児に付き添って登校した20代の母親は「本当に不安。学校には保護者の連絡網があるはずなのに、何も連絡がなかった」と話していた。
同小では当面、登校時だけではなく下校時も集団下校を指導し、教職員が通学路をパトロールする方針。また不安を訴える児童らに対応するため、大阪市こども相談センターの教育相談員が同日派遣された。
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育和小ではこの日朝、通学路に教職員を配置し、PTA役員らの引率で子供たちが集団登校した。明るい表情を見せる子もいたが、保護者に肩を抱き抱えられるようにして登校する姿もみられた。
3年生と1年生の男児に付き添って登校した20代の母親は「本当に不安。学校には保護者の連絡網があるはずなのに、何も連絡がなかった」と話していた。
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大阪ガス子会社元部長を逮捕 4億6千万円背任容疑 大阪府警(産経新聞)
架空取引で会社に約4億6千万円の損害を与えたとして、大阪府警捜査2課は13日、背任容疑で、大阪ガスのIT関連子会社「オージス総研」(大阪市西区)の元公共ソリューション部部長、平田敏則容疑者(46)=兵庫県宝塚市栄町=を逮捕した。府警によると、「間違いありません」と容疑を認めている。
逮捕容疑は平成18年12月、同社が大阪市消防局から消防ネットワークのシステム開発を受注したように装い、架空の売上を計上。そのうえで開発業務の一部を別の通信機器会社2社に外部委託したように見せかけ、代金としてそれぞれ約2億1千万円と約2億5千万円を支払い、会社に損害を与えたとしている。
平田容疑者は日ごろから取引のあった2社に対して「受注先からの入金が遅れているので、立て替えをお願いしたい。後で利益を上乗せして返済する」と説明。2社が払った立替金を売上として計上する一方、返済にあたってはオージスの資金を上乗せし、外部委託の形で会計処理を行っていたという。
府警は平田容疑者が営業成績を維持するため、こうした架空取引を繰り返していたとみて調べている。
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逮捕容疑は平成18年12月、同社が大阪市消防局から消防ネットワークのシステム開発を受注したように装い、架空の売上を計上。そのうえで開発業務の一部を別の通信機器会社2社に外部委託したように見せかけ、代金としてそれぞれ約2億1千万円と約2億5千万円を支払い、会社に損害を与えたとしている。
平田容疑者は日ごろから取引のあった2社に対して「受注先からの入金が遅れているので、立て替えをお願いしたい。後で利益を上乗せして返済する」と説明。2社が払った立替金を売上として計上する一方、返済にあたってはオージスの資金を上乗せし、外部委託の形で会計処理を行っていたという。
府警は平田容疑者が営業成績を維持するため、こうした架空取引を繰り返していたとみて調べている。
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